「東スポ」【1】「東京スポーツ」なのだろうか。通称「東スポ」と呼ばれる新聞がある。 裏のとれてない芸能人のゴシップ記事や宇宙人現るなどの「でたらめ」の記事が書いてある。 会社で東スポの話題になり、なんであんなものあるんだと、だんだん怒りが込み上げてきて、よし、直接電話してみようということになった。誰が?というと俺が… 東スポの本社の電話番号を調べて電話した。 「広報担当者を出してほしい」 と言うと 「どういったご用件でしょうか」と、憎たらしいほど落ち着いている。 「おたくの記事が、でたらめが多すぎるので苦情を言いたい」 「そういうことでしたら、わたくしがお伺いいたします」 まだ、落ち着いている。 【2】 「東スポは公共性のある新聞なのに、でたらめ記事書いてるだろう。それでいいと思ってるのか」 「新聞ですけど、三大新聞のような公共性はありませんから」 でたらめ記事のところは否定しないんだな。 「いや、一応新聞なんだから、公共性はあるだろう」 「うちは、宅配がありませんから、駅売りだけで」 「駅売りでも公共性は、あるだろう。それを読んだ人が信じ込んだら、社会は混乱するよ」 「社会の混乱まではならないと思いますけど。ただの読み物としてとらえてもらえばわかるでしょうか」 「新聞の形態をした、ただの読み物ってことでいいんだ。社内的にも」 「そうですね。公共性のある大新聞とは違うという認識はあります」 【3】 「そういう公共性のないものが、世の中に出回ってもいいと考えてるの?」 「うちの新聞を買ってくれるお客さんがいるんだから、公共性は必要ないと思います」 「どういうこと?」 「うちは宅配をしていなくて、駅売りがメインですから、それを買う人の自由ということですね」 「え!、買う人間がいるからいいんだってこと?」 「そういうことですね」 「でたらめの記事でも、それを好む人が買ってくんだからいいんだということ?」 「そういうことですね。ご理解していただけましたか」 「じゃあ、購買客が悪いってこと?」 「お客さんも当社もあなたも悪いわけではないです」 「なるほど、理解できた。ありがとう」(終) 《 現場監督時代目次へ 》 《 目次へ 》 《 HOME 》 |